2012-03-10

SEM・リスティング広告の初級者が陥りやすい「費用対効果」のワナ(追記あり)

今週お会いした某社の方からお聞きした失敗事例といいますか、リスティング広告(その方はPPC広告と称していたけど)の初級者がきっと高い確率で陥るであろ失敗事例について、現職のミッション=媒体営業のポジショントークとして備忘メモ。

こちらのエントリーから再掲


やはり、広告出稿という“企画”の入り口でズレてしまうんじゃないかと思うわけです。



費用を減らして効果を増やしたい経営者が陥るワナ



ちょうど目を通したばかりの下記コラムで典型的なケースが紹介されていたのでご紹介。

【コラム】エンタープライズ0.2 - 進化を邪魔する社長たち - (151) 常時採用が目印!? 「リスティング広告認定代理店という0.2」 | 経営 | マイナビニュース

都内でエステサロンを経営するIさんの下に「ネットで検索」したと電話がかかってきたのは、寒さが忍び寄ってきた昨年の11月初旬です。
「広告費を半分にして露出を倍にします」
Iさんは検索結果に連動して表示されるリスティング広告を利用しており、毎月の費用が30万円を超えていました。東日本大震災以降、客足が遠のき、コスト削減を考えていた矢先ということもあり飛びつきました。
詳細は不明ですが、

「費用を半分にして露出を倍にします!」

という話しをリスティング広告に当てはめれば、

「インプレッション数は倍に増やせますが、クリック数は半分になります!(キリッ」

ってことですよね?

もしそれが本当なら、この広告代理店は頭の不自由な方々の集団ということになってしまいますが。。。



感無量です。


2社連続でキャッシュフローに苦労した私としても、中堅中小・零細個人事業の経営者の方々がこのセールストークに飛びつく気持ちはよくわかります。




インプレッション数(検索回数×広告表示率) × クリック率 × コンバージョン率



これがリスティング広告の初心者が学ぶ成果評価の公式だと思うのですが、クリック課金のリスティング広告で「費用を半分に」ということは「中間成果であるクリック数を半分に」ということになってしまいます。

では一体、広告出稿の目的だったはずの「コンバージョン数を増やしたい」に応える最終成果はどこにいってしまったのでしょう?


コラム中でも宮脇氏が何度か言及している通り、この広告代理店が、なぜノウハウを持っていると自称するリスティング広告だけで集客できずにテレアポを(きっと延々と)繰り返さなければならないのかと言えば、持っているのが「成果を減らすノウハウ」だってことになってしまいます。


もしそれが本当なら、この広告代理店は頭の不自由な方々の集団ということになってしまいますが。(リフレイン)


多くの企業ではP/L・損益計算書の販売費として広告宣伝費や販売促進費を位置付けていると思いますが、開発・生産部門ではないマーケターからすれば広告宣伝費は投資であり、販売促進費が費用であるはずです。

だって広告は、一人ひとりのスタッフが声をはりあげて叫ぶ範囲をはるかに超えて「広く知らせる」ことなんですよ奥さん!

だから日本であれば、予算さえあればテレビに出稿したいんですよね?

親・兄弟・親戚にも自慢できますもんね。「テレビでCMやってる会社にいるんだ」って。


でも、誰にも(せめて10万人に)認知されていない製品・サービスをテレビで知らせようとしても、そりゃ奥さん、ちょっと無理ってもんですよ。

テレビと比べて検索で多少は絞り込まれるにせよ、ネットだってそこは変わりません。

誰にも(せめて10万人に)認知されていない製品・サービスを検索結果に表示されるリスティング広告で売ろうと思っても、最適化された検索ワードと広告文でクリックまではもっていけてガッツリ作ったランディングページに誘導できたとしても、不審と不安の壁を突破できないからやすやすとはコンバージョンしてくれないですよ。



商売とは信用を売ることであり、ブランディングとは信頼の証しである



不審と不安の壁を突破するために必要なのが信用であり、みんなまずは「無料のお試し」など壁を突破するドアオープナー商品を用意するんですよね?

そして時々、クチコミによってその壁を突破できてしまうラッキーもあります。
( → ほらきたポジショントーク!)

そしてさらに信用を得ていくためにネット広告でできることがあります。

それは、ターゲットがよく利用するサイトにバナー広告を出し続けることです。
( → やっぱりきたポジショントーク!)

ただしこれは、コンテンツターゲティングとしてディスプレイ広告を出稿すればばいいって話しではないです。

競合が御社より高い単価で出稿したら御社のバナーは表示されないんですから、広告枠自体を確保しないと価値は半減・下手すりゃゼロになってしまうわけです。


なすべきことは、


「このロゴマーク、見たことがある。」(テレビ広告じゃないよ、バナー広告だよ)


「この商品名、聞いたことがある。」(クチコミじゃないよ、バナー広告だよ)


という状態を創ることであり、ターゲットのマインドシェアを高めておきつつ、興味が喚起され、さらに検索された時の押さえとしてリスティング広告という受け皿を用意しておくのではないでしょうか?


そして、昨日参加したソーシャルメディアサミット2012スケダチの高広氏も述べられていましたが、「PR → PR → 広告 → PR → 広告あるいはソーシャル」といったように時間軸とチャネルを組合せつつ、TPOに合わせたコミュニケーションシナリオを設計・検証・改善していけるとベストなんだと思います。

▼2012-03-12追記:イベントのまとめ記事を発見

SOCIAL MEDIA SUMMIT 2012 ソーシャルとマスは補完関係, 目的を明確に話題が広がるように設計 - Digital Life
広告の認知度は受け取る側の興味に左右されるため、PRでネタ作りしてからマス広告を行い、さらにPRを行うという手法がある

なので、「リスティング広告しかやっちゃいけない人」は不幸だと思う



蛇足っぽいですが、初級者だけでなく中級車や上級者にもワナは仕掛けられているということでご紹介。

リスティング広告担当者の離職率は何故高いのか? | SEM-LABO

リスティング広告はターゲットを洗い出すこと、キーワードを洗い出すこと、配信先を探すこと、運用をすること、それぞれの作業に意味があります。それらは「何のため?」に作業をしているのかを今一度立ち止まって考える必要があるのかもしれません。
その為には作業を横断的に区切るのではなく、限りなく一気通貫に近い状態に持っていくこと、それらによる小さな成功体験の積み重ねがモチベーション維持、はたまた、向上心を育てるのではないかと思います。

広告・販促予算を持った経験はありますが、リスティング広告に配分された予算の中だけでトライ&エラーしなきゃいけない状況って、きっと辛いんでしょうね。

最後にもう一つ


卒園式から学んだ顧客の記憶に残る感動の作り方*ホームページを作る人のネタ帳

有名な例え話だが、車の無い時代に、顧客はもっと馬力があって、早く走れる「馬」が欲しいというのは当然のことだ。誰もこの時点で「車が欲しい」という答えを出す人は居ない。
自身が顧客になって、その場所でどのような感動を得られるのか、その製品でどのような感動を得られるのかを考える事が、最終的に顧客の価値を見出すことになるんじゃないだろうか。

じゃないだろうか


▼2012-03-26追記

アトリビューション分科会すべてに参加して思う"今"と"これから" | SEM-LABO
リスティング広告は”刈取り型”だけではなく、配信形態やキーワードの種類によって異なる役割を持っています。とはいえですね、この話って専門でリスティング広告に取り組んでいる人間でも理解して取り組んでいる場合はそんなに多くないことが現状なので、仮に100歩譲って”刈取り型”と一緒くたにした場合でも、”刈取り型”を本当に最適化できれば、アトリビューションなんかに取り組まなくてももっとインパクトのある成果を上げることは可能なはずです。

認知経路という提供者発想からコンタクト機会という受け手発想にならないといけない。。。


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